ハングルの 歴史 (훈민정음)
2026年10月20日
- 文字と発音
- つづり
ハングルは、朝鮮王朝の4代目の王・世宗(세종)が1443年に作り、1446年に「訓民正音(훈민정음)」の名で公布した文字です。字母は発音する器官の形などをもとに設計されていて、『訓民正音』解例本に、作った人、時期、目的、作りの原理が書かれています。毎年10月9日の한글날(ハングルの日)は、この公布を記念する日です。
1443年の 創製と 1446年の 公布
韓国の国立国語院(국립국어원)の『새국어생활』に載った임지룡の論文によると、世宗は1443年(世宗25年)の陰暦12月に文字を作りました。当時の字母は28字です。その後、集賢殿(집현전)の学者たちに解説を書かせ、1446年の陰暦9月上旬に公布しました。日本の辞典も同じ年を挙げていて、デジタル大辞泉は「1443年に世宗の命で作られ、1446年に訓民正音の名で公布された」とし、ブリタニカ国際大百科事典、山川の世界史小辞典も1446年の公布を記しています。
K-Villageのテキストと、NHKのまいにちハングル講座のテキストも、ハングルを15世紀中ごろの世宗による文字と紹介しています。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1443年 | 世宗が28字を作る(陰暦12月) |
| 1446年 | 解説書とともに「訓民正音」として公布(陰暦9月上旬) |
훈민정음と いう 名前と 本
훈민정음(訓民正音)は、文字の名前であり、その文字を説明した本の名前でもあります。임지룡は、名前の意味を「民を教える正しい音」という意味で説明しています。
1446年の本は、次の3つの部分からできています。
- 例義編(예의편): 世宗の序文と、字母の音と使い方
- 解例編(해례편): 字母の作り方を説明する제자해(制字解)、초성해・중성해・종성해・합자해・용자례
- 鄭麟趾(정인지)の序文
解例編まで含む本は、1940年に慶尚北道の安東(안동)で見つかりました。この本を解例本(해례본)と呼びます。国宝70号で、1997年にユネスコの世界記録遺産(世界の記憶)に選ばれました。国立国語院は、本が漢文で書かれているため、韓国の人にも内容がよく知られていないと述べています。
字母の 設計
解例本の제자해(制字解)によると、字母の基本は象形(상형)です。임지룡の説明では、子音と母音で考え方が違います。
子音の 5つの 基本字
子音の基本字は、発音する器官の形をかたどったものです。
| 基本字 | かたどったもの |
|---|---|
| ㄱ | 舌のつけ根が喉をふさぐ形 |
| ㄴ | 舌が上の歯ぐきにふれる形 |
| ㅁ | 口の形 |
| ㅅ | 歯の形 |
| ㅇ | 喉の形 |
この5字に線を足す가획(加画)で、ㅋ、ㄷとㅌ、ㅂとㅍ、ㅈとㅊ、ㅎなどを作りました。例えばㄱに線を足してㅋになります。ㆁ・ㄹ・ㅿの3字も基本字に線を足して作られていますが、その線は音が強くなる意味を持たない例外で、이체자(異体字)と呼ばれます。
母音の 3つの 基本字
母音は、天・地・人(천지인)の三才をかたどった3つの字が基本です。
| 基本字 | かたどったもの |
|---|---|
| ・ | 天(丸い形) |
| ㅡ | 地(平らな形) |
| ㅣ | 人(立っている形) |
この3字を組み合わせて、ㅗ、ㅏ、ㅜ、ㅓ、ㅛ、ㅑ、ㅠ、ㅕなどを作りました。・は現在の母音の10字には入っていません。
終声(받침)には、新しい字を作らず、初声の字をもう一度使います。初声、中声、終声を組み合わせて1つの音節にする書き方も、このとき決められました。
現在の 24字
現在の基本字母は、子音14字と母音10字の24字です。デジタル大辞泉は、創製のときは母音11字・子音17字だったと説明しています。字母の名前と辞書での並びは字母の名前と順序(자모)にあります。
字の形がどこから来たかについては、器官をかたどったという制字解の説明のほかに、パスパ文字(八思巴文字)をヒントにしたという説もあります(ブリタニカ国際大百科事典)。国立国語院に載った강창석の論考は、상형と가획の2つだけではㅁ・ㅂ・ㅍの成り立ちなど説明しきれない点があり、作る途中で試行錯誤があった可能性にも触れています。
한글と いう 名前
ハングル(한글)という名前は、20世紀に入って使われるようになりました。それ以前は諺文(언문)などと呼ばれました。日本語の「ハングル」は、この한글の発音を写したものです。日本大百科全書は、この名前を広めた人物として周時経(주시경)を挙げています。
한글날 (ハングルの日)
한글날は10月9日で、韓国の国慶日(국경일)の1つです。日付が決まるまでの流れは次のとおりです。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1926年 | 朝鮮語研究会(現在のハングル学会)が、陰暦9月29日を「가갸날」と定める |
| 1928年 | 名前を「한글날」に改める |
| 1940年 | 解例本が見つかり、公布が「正統11年(1446年)9月上澣」と分かる |
| 1946年 | 上澣の終わりの日を陽暦に直した10月9日を한글날とし、この日に公布500周年の記念式 |
| 1991年 | 公休日から外れる(1990年8月24日の閣議で決定) |
| 2005年 | 国慶日に決まる |
1940年に見つかった解例本には、公布の時期が「9月上澣」(陰暦9月の上旬)と書かれていました。その終わりの日を陽暦に直して10月9日になりました。
한글날は1991年から2012年まで公休日ではありませんでしたが、2012年12月28日公布の「관공서의 공휴일에 관한 규정」の改正(대통령령 제24273호)で、2013年から再び公休日になりました。
練習問題
- 世宗が字母を作ったのは何年ですか。
- 「訓民正音」の名で公布されたのは何年ですか。
- 母音の基本字ㅡは、何をかたどった形ですか。
答え
- 1443年です
- 1446年です
- 地(平らな形)です
読みものの練習は読みもの一覧にあります。
参考に した 資料
- 국립국어원『새국어생활』16권 3호(2006)임지룡「한글날의 참된 의미를 찾아서」。1443年陰暦12月の創製、1446年陰暦9月上旬の公布、解例本の構成、象形・加画・天地人、한글날の経緯(2026-10-20閲覧)
- 국립국어원『새국어생활』18권 4호(2008)「국립국어원 소식」。解例本の構成、1940年の発見、国宝70号、1997年のユネスコ世界記録遺産(2026-10-20閲覧)
- 국립국어원 한글 누리집 강창석「한글의 제자 원리」。상형・가획だけでは説明しきれない点(2026-10-20閲覧)
- コトバンク「ハングル」。デジタル大辞泉、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、山川 世界史小辞典、日本大百科全書、世界大百科事典の各項目。1443年の創製、1446年の公布、字母の数、パスパ文字説、名前の由来(2026-10-20閲覧)
- 국가기록원「한글이 걸어온 길 한글날, 다시 법정공휴일로(2013년)」。2012年12月28日公布の改正(대통령령 제24273호)、2013年からの公休日の再指定(2026-10-21閲覧)
- 국립국어원『새국어생활』23권 3호(2013)이건범「한글날은 어떻게 다시 공휴일이 되었는가?」。1991年からの公休日除外(2026-10-21閲覧)
- 한국민족문화대백과「이체자」。ㆁ・ㄹ・ㅿが가획の例外であること(2026-10-21閲覧)
- K-Villageのテキスト Lesson1「ハングル入門① 文字の仕組み」p.7。1443年に世宗大王が作ったという説明を確認
- NHK出版『NHK まいにちハングル講座 2026年9月号』の囲み記事「ハングル」の名について。15世紀中ごろに作られた表音文字という説明を確認